サーマルグリスの選び方|標準3.5g・大容量10g・ARCTIC MX-6・Thermal Grizzly Kryonautの4タイプを各社公式仕様で整理した
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サーマルグリスの商品ページには、「高性能」「長寿命」「オーバークロック向け」といった言葉が並ぶ。ところが、Noctua、ARCTIC、Thermal Grizzlyの公式ページには、熱伝導率(W/mK)の数値が載っていない。ARCTICは公式ページで数値を公開しない理由をFAQにまとめており、Thermal Grizzlyは2020年末以降、W/(m·K)の一般的な数値を公表していないと明記している。Noctuaの仕様ページにも熱伝導率の記載はない。
このため、公式情報だけで「どれが一番冷える」とは比較できない。代わりに、電気を通すか、動作温度の範囲、容量と塗布できる回数、付属品、AM5への対応といった、公式ページに書かれている条件で選び分ける。CPUクーラー側の選び方はCPUクーラーの選び方、CPU自体の選び方はCPUの選び方で扱っている。
サーマルグリス選びで見る5つの軸
| 軸 | 何が違うか | 影響する場面 |
|---|---|---|
| 電気伝導性 | 電気を通さないか | 塗布時にソケット周辺へはみ出した場合の扱いやすさ |
| 動作温度範囲 | -50℃から+200℃、-250℃から+350℃など | 公式が想定する使用環境の幅 |
| 容量と塗布回数 | 1gから10g | 何台分、何回の塗り直しに足りるか |
| 付属品 | クリーニングワイプ、ペーストガード、スパチュラ | 古いグリスの拭き取りや、塗布作業のしやすさ |
| 公式の性能指標 | 熱伝導率、熱抵抗、粘度、密度 | 3社で項目が揃っておらず、横並びの比較は難しい |
4タイプの比較表
| タイプ | 代表製品 | 容量 | 電気伝導性 | 動作温度(公式) | 付属品など |
|---|---|---|---|---|---|
| ①標準3.5g | Noctua NT-H2 3.5g | 3.5g(1.2ml) | 導電性なし | -50℃〜+200℃ | NA-CW1ワイプ3枚 |
| ②大容量10g | Noctua NT-H2 10g | 10g | ①と同じNT-H2(公式一覧では大容量版) | ①と同じNT-H2(公式一覧では大容量版) | クリーニングワイプ10枚 |
| ③ARCTIC MX-6 | ARCTIC MX-6(ACTCP00080A) | 2g・4g・8g | 導電性・容量性なし | -50℃〜150℃(連続使用) | MX Cleaner付き/なしを選択 |
| ④Thermal Grizzly | Kryonaut/Kryonaut Extreme | 1g・1.5ml・3ml/2g・6g・9ml | 0 pS/m(導電性なし) | -250℃〜+350℃を想定して開発 | 容量ごとに内容が異なる |
仕様は各社公式サイトの記載(2026年10月25日確認)による。項目の定義や測定条件は各社で異なる。
①標準3.5g|Noctua NT-H2 3.5g
1台のPCに使う、または数回の塗り直しまで想定する場合の標準的なタイプである。
NT-H2 3.5gは、内容量3.5g(体積1.2ml)、密度2.81 g/cm³。電気を通さず、腐食性もない。動作温度は-50℃から+200℃。推奨の保管期間は使用前で最長3年、CPU上での使用期間は最長5年とされている。公式ページが示す塗布回数の目安は、大型CPUで約3回、中型で約15回、小型で約20回である。付属品はNA-CW1クリーニングワイプ3枚。
AMD AM5向けには、NT-H2 3.5g AM5 Editionが別に用意されている。内容はグリス本体、AM5用のペーストガード(NA-TPG1)、NA-CW1ワイプ3枚。ペーストガードは、AM5のCPU向けに公式が用意している付属品である。
NoctuaはNT-H2の前世代にあたるNT-H1も併売しており、公式の一覧ではNT-H2が「Second」世代、NT-H1が「First」世代と区別されている。
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②大容量10g|Noctua NT-H2 10g
複数台のPCを組む、ノートPCやGPUの塗り直しにも使うなど、使用量が多い場合のタイプである。
NT-H2 10gは、①と同じNT-H2の大容量版で、公式の一覧ではXLサイズと位置づけられている。付属品はクリーニングワイプ10枚で、①の3枚より多い。グリスの量は①の約2.9倍(3.5gから10g)で、ワイプも①の3枚から10枚に増える。
| 項目 | ①NT-H2 3.5g | ②NT-H2 10g |
|---|---|---|
| 内容量 | 3.5g | 10g |
| 付属ワイプ | NA-CW1×3枚 | クリーニングワイプ×10枚 |
| AM5 Edition | あり(ペーストガード付き) | なし |
| 向く場面 | 1台のCPU、数回の塗り直し | 複数台、頻繁な組み替え |
②にはAM5用のペーストガードが付属しない。AM5のCPUに使う場合は、ペーストガードを単品(NA-STPG1)で用意するか、AM5 Editionの①を選ぶ分け方になる。
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③ARCTIC MX-6|容量を選べる非導電タイプ
容量を2g・4g・8gから選び、クリーナーの有無も選びたい場合のタイプである。
ARCTIC MX-6(型番ACTCP00080A)の公式仕様は、粘度45,000 poise、密度2.6 g/cm³。電気を通さず、容量性もない。体積抵抗率と絶縁破壊電圧(7.5 kV/mm)が公式に記載されており、電気的な特性を数値で確認できる点が他のタイプと違う。連続使用温度は-50℃から150℃。乾燥や油分の分離が起きにくい性質が記載されているが、寿命の年数は示されていない。
容量は2g、4g、8gの3種類で、それぞれMX Cleanerが付くものと付かないものがある。①のNT-H2が3.5gと10gの2択であるのに対し、MX-6は用途に合わせた細かい容量の選択が可能である。
なお、粘度の単位はARCTICがpoise、Thermal GrizzlyがPa·sで、1 Pa·s = 10 poiseの換算になる。ただし測定条件が各社で異なるため、数値の大小を直接比べて硬さの優劣を判断することはできない。
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④Thermal Grizzly|Kryonaut と Kryonaut Extreme
オーバークロックや高負荷運用を想定した、公式が高い温度範囲を示すタイプである。
Kryonautの公式データシートは、熱抵抗0.0032 K/W、密度3.7 g/cm³、粘度130〜170 Pa·s、電気伝導率0 pS/m(DIN 51412-1準拠の測定)、温度範囲-250℃から350℃。シリコーンベースで、パッケージは3ml、1.5ml、1gが用意されている。熱伝導率の代わりに熱抵抗が掲載されている点が、他の2社の仕様ページと違う。
上位のKryonaut Extremeは、密度3.76 g/cm³、粘度130〜180 Pa·s、電気伝導率0 pS/m。型番はTG-KE-090-R、容量は2g、6g、9ml。温度範囲は-250℃から+350℃を想定して開発されたとされるが、公式ページには「高温での連続使用を一律に認めるものではない」という趣旨の注記がある。
| 項目 | Kryonaut | Kryonaut Extreme |
|---|---|---|
| 密度 | 3.7 g/cm³ | 3.76 g/cm³ |
| 粘度(公式) | 130〜170 Pa·s | 130〜180 Pa·s |
| 電気伝導率 | 0 pS/m | 0 pS/m |
| 容量 | 3ml・1.5ml・1g | 2g・6g・9ml |
| 熱伝導率の公表 | なし(熱抵抗0.0032 K/W) | なし(2020年末以降、非公表と明記) |
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選ぶ順番のチェックリスト
- CPUのソケットを確認する:AM5なら、ペーストガード付きのNT-H2 AM5 Editionが候補に入る
- 使う量を決める:1台なら3.5gや2g〜4g、複数台や頻繁な組み替えなら10gや8gを選ぶ
- 古いグリスの拭き取り手段を確認する:ワイプやクリーナーが付属する製品か、別途用意が必要かを見る
- 導電性を確認する:3社とも公式ページでは電気を通さないと記載されている。導電性のあるタイプ(液体金属など)は本記事の範囲外
- 温度範囲を確認する:高負荷の運用を想定する場合は、公式の動作温度が使用環境を含むかを見る
気になる点
- 熱伝導率は3社の公式ページで比較できない:Noctuaは仕様ページに記載なし、ARCTICとThermal Grizzlyは公開しない方針を示している。冷却性能の差は、公式情報だけでは確認できない
- 粘度や密度の測定条件は各社で異なる:数値の大小から塗りやすさや性能の優劣は判断できない
- 価格は本記事に載せていない:Noctua、ARCTIC、Thermal Grizzlyの公式ページには国内価格の掲載がない。購入時は販売店の価格を確認する必要がある
- Amazonの商品ページは出品形態が複数ある:同じ製品でも国内正規代理店品と並行輸入品が並ぶ場合がある。商品ページの販売元表記と内容量を確認する必要がある
- 本記事は3ブランドの整理:他社にもサーマルグリスはあり、液体金属タイプは電気を通すため取り扱いが別になる
まとめ
サーマルグリスは、「ソケット」「使う量」「付属品」の順に条件を決めると候補が絞れる。
- 1台分で、AM5のCPUにペーストガード付きで使いたい → タイプ①:NT-H2 3.5g AM5 Edition
- 1台分で、標準的な非導電タイプを選びたい → タイプ①:NT-H2 3.5g
- 複数台、または頻繁に組み替える → タイプ②:NT-H2 10g
- 容量を細かく選び、電気的な特性を数値で確認したい → タイプ③:ARCTIC MX-6
- 高負荷運用を想定し、公式が広い温度範囲を示す製品を選びたい → タイプ④:Kryonaut/Kryonaut Extreme
CPUクーラーの取り付けと合わせて見直す場合は、CPUクーラーの選び方とPCケースの選び方も参考になる。
公式情報
編集者:ナナ
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