UPSの選び方|矩形波・正弦波・ラインインタラクティブ・常時インバータの4タイプで整理した
当記事はアフィリエイト広告を利用しています。詳細
UPSは「何分もつか」で選ばれやすいが、後から効いてくるのは容量ではなく出力波形と切替時間の2点になる。同じ350VAでも、バックアップ運転時に矩形波を出すモデルと正弦波を出すモデルがあり、前者は接続できる機器が公式に限定されている。メーカー希望小売価格でみると3万円台から20万円超まで開き、上位ほど容量ではなく給電方式そのものが変わる。なお本記事に載せた価格はいずれもメーカー希望小売価格(税込)で、実売価格はこれを下回ることが多い。
UPSを入れて防げること、防げないこと
UPSが引き受けるのは、商用電源が落ちてから接続機器が安全に停止するまでの数分間だけである。長時間の停電を乗り切る装置ではない。
防げるのは次の範囲になる。
- 停電・瞬停による書き込み中のファイル破損
- NASのRAID再構築を招く突然の電源断
- ルーターやONUの再起動による外部からの疎通断
一方、UPSを入れても変わらないものもある。バッテリ運転が続けば結局は落ちるため、自動シャットダウンソフトをOSに常駐させ、残量が減った時点で正規手順で停止させるところまでを一組で構成する必要がある。オムロンの場合、シャットダウンソフトは公式サイトから無償でダウンロードできる。
もう一つ、全方式に共通する接続禁止条件がある。オムロンの公式注記では、絶縁トランス・変圧トランス・コイル・モータなどの誘導性の機器は出力側に接続できず、レーザプリンタや複写機のように間欠的に大電流が流れる装置も接続不可とされている。デスク周りのレーザプリンタをUPS配下に入れる構成は、この時点で外れる。
4タイプの位置づけ
オムロンの公式区分では、給電方式は常時商用・ラインインタラクティブ・常時インバータの3種類になる。このうち常時商用は出力波形が正弦波と矩形波の2系統に分かれるため、選ぶ側の判断としては実質4タイプになる。
| タイプ | 給電方式 | 出力波形 | 切替時の瞬断 | 想定する接続機器 |
|---|---|---|---|---|
| タイプ1 | 常時商用 | 矩形波 | あり | ハブ・ルーターなどのネットワーク機器、小型NAS |
| タイプ2 | 常時商用 | 正弦波 | あり | パソコン、小型サーバ |
| タイプ3 | ラインインタラクティブ | 正弦波 | あり(AVRで電圧は補正) | サーバ、ストレージ |
| タイプ4 | 常時インバータ | 正弦波 | なし | サーバ、ストレージ、PLC・FA産業機器 |
上から下へ行くほど価格が上がるが、上がり方は連続していない。タイプ3までは数万円の範囲に収まり、タイプ4だけ一桁変わる。
タイプ1:常時商用・矩形波 — ルーターとONUを止めない最小構成
通常時は商用電源をそのまま出力し、停電時だけバッテリからインバータ運転に切り替わる方式のうち、バックアップ時の出力波形が階段状の矩形波になるタイプ。オムロンではBZシリーズがこれに当たる。
代表機のBZ35LT2は350VA/210W、テーブルタップ型の筐体でバックアップ出力3口とスルー出力3口を持つ。切替時間は10ms以内、バッテリは期待寿命4〜5年(周囲温度20℃)の長寿命タイプで、回線サージ保護機能も入っている。メーカー希望小売価格は31,240円(税抜28,400円)、上位のBZ50LT2は500VA/300Wで39,930円(税抜36,300円)。
重要なのは制約のほうで、オムロンは公式に「BZシリーズはバックアップ運転時に出力電圧波形は矩形波となるので、入力力率が改善された電源(PFC)や誘導性負荷の保護には使用できません」と明記している。近年のデスクトップPCや4ベイ以上のNASは内蔵電源がPFC対応であることが多く、その場合このタイプは選択肢から外れる。逆に、ACアダプター駆動のルーター・ONU・スイッチングハブ・小型NASであれば公式の推奨範囲に収まる。
オムロン 無停電電源装置(常時商用/タップ)350VA/210W
¥19,415
Amazonで見る →
自宅の回線側だけを止めないという目的なら、スイッチングハブの選び方で整理した1GbEクラスの消費電力なら210Wの枠に十分収まる。ルーター・ONU・ハブの3点を合計しても数十W程度で、残りをバックアップ時間に回せる計算になる。
タイプ2:常時商用・正弦波 — PFC電源を含めて守る標準構成
給電方式はタイプ1と同じだが、バックアップ運転時の出力も正弦波になる。オムロンではBW/BY/BVシリーズがここに入る。
BY35Sは350VA/210W、商用時・バックアップ時ともに正弦波出力で、切替時間は10ms以内。最大負荷210Wでのバックアップ時間は6分(周囲温度20℃・バッテリ初期状態)とされている。出力コンセントはNEMA 5-15Rが4口、バッテリはホットスワップ対応でユーザー側交換が可能、充電時間は12時間。本体約4.5kgで、BY80S以下は自然空冷のためファンを持たない。メーカー希望小売価格は40,700円(税抜37,000円)で、500VA/300WのBY50Sが47,410円、1200VA/720WのBY120Sが101,310円と続く。
タイプ1との差額はBZ35LT2比で9,460円。この差で「PFC電源のPCやNASを繋いでよいか」という判断が消えるため、接続機器が今後増える前提なら最初からこちらを選ぶほうが構成の自由度は高い。
オムロン(Omron) 無停電電源装置 UPS BY35S
¥22,360
Amazonで見る →
ファンの有無は設置場所に直結する。BY120Sだけは強制空冷で騒音45dB以下という仕様値が公開されており、デスク脇に置く前提なら自然空冷に収まる容量で止めるほうが扱いやすい。
タイプ3:ラインインタラクティブ — AVRで電圧そのものを補正する階層
基本構造は常時商用と同じだが、AVR(電圧安定化)機能が加わる。電圧を変換するトランスを経由することで、通常運転時でも出力をAC100Vに近づけるよう調整する方式で、オムロンではBL/BNシリーズ、シュナイダーエレクトリックではAPC RSシリーズが該当する。
APC BR550S-JPは550VA/330W、ラインインタラクティブ方式の正弦波出力。切替時間は標準6ms・最大10msで、コンセントはバックアップ+サージ保護が3口、サージ保護のみが3口という分割構成になっている。バックアップが必要ない周辺機器をサージ側に逃がせるため、バックアップ容量を消費せずに雷対策だけ効かせられる。保証は3年。
コンセントの役割分けという発想は電源タップの選び方で扱った雷ガード型と同じだが、UPSの場合は「守る対象を絞ることでバックアップ時間が伸びる」という効果まで付いてくる点が違う。
APC 無停電電源装置 UPS 550VA/330W BR550S-JP E ラインインタラクティブ給電 長寿命バッテリー 正弦波
¥20,294
Amazonで見る →
オムロンの公式説明では、この方式は「電源電圧の変化が比較的小さい環境でのサーバやOA機器の保護に適している」と位置づけられている。裏を返すと、電圧変動が大きい環境ではAVRでも足りず、次のタイプ4が必要になるという線引きになる。
タイプ4:常時インバータ — 切替の瞬断そのものをなくす階層
通常運転時から商用電源をインバータ経由で出力する方式。インバータが電源のノイズを取り除き、常に電圧値を調整するため、バックアップ運転へ切り替わる際の瞬断が発生しない。
オムロンBU100RSは1kVA/800Wの常時インバータ機で、奥行315mm(入力ケーブルカバーを含めて378mm)とラックに収まる寸法に収められている。フロント耳金具のみでEIA規格ラックに固定でき、制御回路が停止に至る故障が起きても給電を継続する「無停止バイパス機能」を標準装備。常時インバータと常時商用を自動で切り替えて消費電力を抑えるECOモード、出力電圧の4段階設定(100V/110V/115V/120V)、RS-232Cと接点信号のインタフェースも持つ。
オムロン BU100RS 無停電電源装置 常時インバータ/1KVA/800W/ラックマウント
¥134,376
Amazonで見る →
ただしメーカー希望小売価格は204,820円(税抜186,200円)で、タイプ1の6倍以上になる。瞬断が許されない用途、あるいは入力電圧の変化が大きい設置環境に限られる階層で、自宅のデスク周りやホームラボの範囲であればタイプ2かタイプ3で足りる場面がほとんどになる。
容量の決め方:VAとWの両方を超えない
UPSの出力容量は「350VA/210W」のように2つの数字で書かれる。オムロンの仕様書には「本機に接続する負荷容量は、VA値およびW値の両方が本規定を超えない範囲でご使用ください」と注記されており、片方だけを見て判断すると足りなくなる。
- W(有効電力):機器が実際に消費する電力。ACアダプターの表記や機器の定格から積む
- VA(皮相電力):電圧×電流。力率が1でない機器では W より大きくなる
BY35Sの場合、210Wと350VAの比は0.6。力率0.6を下回る機器構成では、Wに余裕があってもVA側で先に上限に当たる。実際の積み上げでは、接続予定機器のW合計に2〜3割の余裕を見ておき、将来の追加分も含めて一段上の容量を選ぶほうが安全側になる。
NASの選び方で扱った2ベイクラスはACアダプター駆動で数十W、4ベイ10GbEクラスは内蔵電源で100Wを超えることもある。後者はPFC電源であることが多く、容量以前にタイプ2以上が前提になる。
バッテリ寿命と交換で見る長期コスト
UPSは買って終わらない。バッテリの期待寿命はオムロンのBZ/BYシリーズとも4〜5年(周囲温度20℃)とされており、この周期で交換費用が発生する。
| 本体 | 本体価格(税込) | 交換用バッテリ | バッテリ価格(税込) | 本体価格に対する比率 |
|---|---|---|---|---|
| BY50S | 47,410円 | BYB50S | 19,140円 | 約40% |
| BY80S | 77,880円 | BYB80S | 39,820円 | 約51% |
| BY120S | 101,310円 | BYB120S | 52,030円 | 約51% |
4〜5年ごとに本体価格の4〜5割が乗る計算になるため、初期費用だけで比較すると実態を見誤る。オムロンは本体3年保証に加えてバッテリ3年間無償提供サービスを用意しているが、これは購入後1ヶ月以内のユーザー登録が条件になっている。開封して設置した日に登録まで済ませておかないと、この分が丸ごと自己負担に変わる。
もう一つの継続コストは待機電力である。BY80S以下の内部消費電力は無負荷時が通常12W、定格負荷時が通常20Wと公開されている。無負荷時の12Wで24時間365日動かすと年間およそ105kWh、電力量単価を31円/kWhとすれば年3,300円前後という試算になる(実際の消費は接続負荷によって変動する)。
エンジニア視点で見るとどう選ぶか
UPSの構成を決めるときに最初に決まるのは容量ではなく、「どこまでをUPS配下に入れるか」の線引きになる。
NASだけをUPSに繋ぐ構成は一見合理的に見えるが、停電時にルーターとONUが落ちると、外部からNASの状態を確認する手段がなくなる。シャットダウンソフトがUPSからの信号でNASを止めてくれたとしても、それが成功したかどうかを確認できるのは復電後になる。ルーター・ONU・ハブという疎通経路を先にUPS配下へ入れておくと、停電中も外から状況を追える。
この用途に限れば、消費電力の合計が小さいためタイプ1の350VAクラスで足りる。Wi-Fiルーターの選び方で触れた10Gbps対応クラスでも、ACアダプター駆動であれば矩形波の制約には引っかからない。
一方、母艦PCやPFC電源のNASまで守るなら、波形の制約が効いてくるためタイプ2以上が前提になる。10GbEのスイッチを含める場合は、アイオーデータ BSH-XGのように内蔵電源を持つ機種があり、この場合も正弦波側で組むほうが確実になる。
自動シャットダウンの動作確認も、設置時に一度通しておくほうが確実になる。UPSからの信号でOSが正しく停止するかは、USBやRS-232Cの接続とソフトの対応状況に依存する。オムロンは公式サイトでOS・NAS・ネットワーク機器ごとの動作検証結果を公開しており、購入前に接続予定の機器が対象に含まれるかを確認できる。
気になる点
矩形波タイプの制約は、カタログの目立つ位置には書かれていない。BZシリーズの製品ページには「サポート範囲が『入力波形が正弦波のみ』のパソコンや機器には使用できません」という注記があるが、価格だけを見て選ぶと見落としやすい。停電時に初めて発覚する種類の不一致であり、動作確認の機会が停電当日しかないという点が厄介になる。
バッテリ交換費用の比率も無視できない水準にある。BY80S/BY120Sクラスでは本体価格の5割前後が4〜5年ごとに乗るため、長期の総コストでは一段下の容量を選んで交換周期を回すほうが安く付くケースが出てくる。
常時インバータ機の価格差も大きい。BU100RSは20万円を超え、タイプ1との差は17万円以上になる。無停止バイパス機能やECOモードは魅力的な仕様だが、自宅環境で瞬断10ms以内が実害になる機器は多くない。
設置スペースも見落としやすい。BY35S/BY50Sは本体約4.5kgで、テーブルタップ型のBZシリーズと比べると据え置きの場所を選ぶ。縦置き・横置きの両対応ではあるが、デスク下に入れる前提なら奥行285mmという寸法を先に測っておくほうが確実になる。
まとめ
UPSの4タイプは、容量ではなく給電方式と出力波形で分かれる。
- ルーター・ONU・ハブ・小型NASだけを止めない → タイプ1(常時商用・矩形波)
- PFC電源のPCやNASを含めて守る → タイプ2(常時商用・正弦波)
- 電圧変動のある環境で通常時から補正する → タイプ3(ラインインタラクティブ)
- 瞬断そのものを許容できない → タイプ4(常時インバータ)
判断の分岐点は、接続予定の機器にPFC電源が含まれるかどうかの1点に集約される。含まれるなら矩形波は選べず、含まれないならタイプ1とタイプ2の差額を払って正弦波にするかどうかは将来の拡張予定次第になる。そのうえで、VAとWの両方が上限を超えないよう容量を積み、バッテリ交換費用を4〜5年周期のランニングコストとして最初から見込んでおく形が、長く運用する場合の現実的な組み方になる。
公式情報
編集者:ナナ
※ この記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。リンク先での購入により、当サイトが報酬を受け取る場合があります。